DEVILMAN crybaby / デビルマンクライベイビー(オリジナルアニメ)
- 初出:2018年
- 作者 / 原作者:永井豪
- 監督:湯浅政明
- 制作会社:サイエンスSARU
- 音楽:電気グルーヴ
- 声優:内山昂輝 小山力也 小清水亜美 村瀬歩 潘めぐみ 田中敦子
記事を書いた人の評価
- 好き : ★★★★
評価基準を表示
好き
- ★★★★★ 生涯の心の宝物
- ★★★★ 素直に好きと言える
- ★★★ 得るものはあった
- ★★ 暇つぶしにはなった
- ★ お金と時間の無駄
- 万人受け: ★★
評価基準を表示
万人受け
- ★★★★★ 誰でも楽しめる
- ★★★★ 拒否反応はなさそう
- ★★★ 慣れた人なら大丈夫
- ★★ 偏りがあり人を選ぶ
- ★ マニアしか理解不能
- 完成度 : ★★★★
評価基準を表示
完成度
- ★★★★★ これ以上望めない
- ★★★★ 十分満足できる
- ★★★ 少し気になる箇所も
- ★★ 素人が作るよりマシ
- ★ 酷すぎてむしろ奇跡
作品の内容
泣き虫の高校生・不動明は、幼なじみの飛鳥了と再会し、
危険なパーティに誘われた。
そこで明は見る。悪魔に変わっていく人々を。
そしてまた明自身も……。
配信情報
2018/01/08現在
Netflix(見放題)
レビュー(ネタバレなし)
この記事に続いて、レビュー(ネタバレあり)もあります。
デビルマン。
そのあまりにシンプルな響き。
これはかつて少年誌に掲載されていた漫画のタイトルである。
原点としての『デビルマン』の位置付け、価値については既にレビューを上げておりますのでそちらをご覧ください。
デビルマン(原作漫画オリジナル版)レビュー
アニメ版のデビルマンの影響か、デビルマンに対してダークヒーローのような印象を持っておられる方が多いかと思います。
しかし、それは全く違います。
とにかく、先に原典たる原作漫画を、それもできればオリジナル版で読んでいただきたい。
そのあとでもデビルマンをバットマンと同系列で語れるかどうかを問いたい。
このNETFLIX版は、原作への深い理解と愛が感じられます。
派生作品のアニメ版や、こき下ろされて地獄に落とされた実写版に対する愛さえも感じられます。
全てに怒り、全てに悲しみ、全てを赦す。
原作も愛に溢れていましたが、このNETFLIX版は原作をも超える愛に満ち溢れています。
作品の完成度としては、はっきり言いますと「残念」です。
しかし、それはオリジナルをも超えた新しい聖典(バイブル)となるには一歩足りなかったという極めて厳しい目線からの評価であり、通常の評価では良作を超えていることは保証します。
私は『デビルマン』は10話でも十分描ける作品だと思いますが、ただ、このスタンスで描くなら20話は欲しかったですね。
ほんの少しですが、監督の「あれもこれも描こう」という欲張りが出てしまった気がします。
私はデビルマンを愛していますので、感性を研ぎ澄まして鑑賞させていただきましたが、もっと気軽に鑑賞していただいても、むしろその方がシンプルに心に響くものがあるかもしれません。
これがデビルマンとの邂逅(ファーストコンタクト)であった場合、近年のアニメとは明らかに流れ方が異なる時間軸に戸惑うかもしれません。
違和感を覚えるかもしれません。
しかし、ポジティブネガティブいずれにおいても確実に心は揺さぶられると思います。
これを見て1ミリも心が動かない人がいたとしたら、あなたは本当に人間でしょうか。
もしかするとあなたの心はいつのまにかデーモンに乗っ取られているのかもしれませんよ。
あ、あとめっちゃどうでもいいことですが、田中敦子さん(草薙素子)のシレーヌ、エロいです笑
配信はもちろんNETFLIX限定なのでNETFLIXでどうぞ。
電気グルーヴが担当した主題歌『MAN HUMAN』は2バージョンあります。
電気グルーヴファンは特典DVD付きの前者を、アニメから興味を持たれた方は後者を買えば良いと思います。
MAN HUMAN Single, CD+DVD, Maxi
MAN HUMAN / 今夜だけ Single, Maxi
評価者
j-cultures.org
評価日
作品名
DEVILMAN crybaby / デビルマンクライベイビー
好き
レビュー(ネタバレあり)
◆クリック【ネタバレを読む】クリック◆デビルマンは、極めて普遍性の高い物語です。
つまり、個人的感情移入を狙って作られる昨今のラノベ的物語とは一線を画し、確実に文学寄りの物語です。
それが良いか悪いかはともかく、そこは疑いようがありません。
そもそも、作者が幼少期に読んだダンテ『神曲』の挿絵の強烈な印象から逃れることができず、取り憑かれるように作品化したもの、それが『デビルマン』だそうですから。
人、人ならざるもの、人を超えたもの、そういう時代を超えた普遍的イメージを具体化したものです。
昨今のアニメカルチャーは、個人的体験として受け入れる、つまり自身の日常時間の流れにそのままアニメの時間を取り込んで楽しむことを1つの軸としています。
それは、あくまでもたとえですが、好きなポップミュージックを聴くというのと近いイメージかと思います。
しかし、デビルマンはどちらかというと絵画に近い。
音楽にたとえるとしても、ポップスではなくクラシックでしょう。
普遍的概念として作品の構造が先に明確に存在し、エピソードの断片から構造化を進めてゆく。
つまり、先に構造というビジョンが存在するので、作品を描き上げるために必要な時間は、いくらでも調整できます。
結論だけを絵画で見せれば、0秒で表現できるでしょうし、細かい人物設定を幾重にも重ねるなら何シーズンもの話にもできると思います。
つまり、デビルマンは単なるテンプレートに過ぎません。
昔からよくあるモチーフをわかりやすく現代にテンプレート化した永井豪先生は、この作品を描いた時は紛れもなく悪魔が取り憑いていたと思います。
しかし、このcrybabyを作った湯浅監督は何に取り憑かれることもなく生身の人間として、作品を完成させたように思います。
キャラクターデザインを劇画調から現代アニメ調へ変えたこと、これは時代背景を反映するという極めて良識的判断で、懐古主義者が批判することではありません。
完全に正しい。
静止画を多用したアニメーションも、デビルマンが元来絵画的であるということをよく理解されていると思います。
素晴らしい。
エログロに関しては、正直思ったほどではありませんでした。
今の時代にできる最高のエログロ表現ではなかった。
ここは残念です。
また、デーモンのデザインも残念でした。
原作をリスペクトしたのかもしれませんが、いま新進気鋭のデザイナーがデーモンを描いたとしたら、あの形にはならないと思います。
もっとモダンなデザインのデーモンであったなら最高でした。
敢えて作品に対してネガティブな意見を上げるなら、中途半端な設定のキャラが急ぎ足で駆け抜けていったのが残念でした。
その最たるものは、ゼノンです。
原作では人類とデーモンの戦いの火蓋を切って落とした魔王ゼノン、それが単なる使いっ走りのように登場しています。
原作で大きな位置付けだったキャラクターはできる限り登場させたいという監督の愛だったのかもしれませんが、中途半端感が否めませんでした。
要は、不動明と飛鳥了の二人の関係性を構造化できればそれでよく、他の要素は全ておまけです。
視聴者にわかりやすく伝えるために陸上部の設定やバトンをつなぐ設定を作ったのはとても良いと思います。
ただ、それに時間を圧迫されて描くべきポイントが削られると本末転倒です。
原作では、雷沼教授などを筆頭にもっと人類の醜さが描かれていましたが、そこもはしょられていました。
10話で収めるなら、私はもっと不動明と牧村美樹を親密に、なんなら恋人同士くらいで描くべきだったと思います。
個人的移入感を求める現代の視聴者に対してはなおさらその方が効果的だったと思います。
そのエピソードをたたみかけてから、あの地獄のようなラストへ向かった方が、よりカタルシスが大きかったはずです。
もし私にデビルマンを制作できる権限があったならそうしたいと感じますが、でも、それをすると表現が個人的であるがゆえに絶望が大きすぎる。
そこを配慮して、あくまでも距離を置いた架空の話として進めた。
それが監督の視聴者への愛だったのかもしれません。
そして、最大のポイントは、もちろんラストです。
原作では、サタンが本当に不動明に愛を感じていたのかは語られませんでした。
感じていたと思いますが、それを明らかにしないことが作者のメッセージでした。
しかし、今作では、惜しげも無くサタンは不動明に愛の告白をしています。
原作は、読者の心を揺さぶり何かを感じ取ってもらうことがラストシーンの意味だったと思いますが、今作では直接的です。
全ては愛なんだ。
愛を叫ぼう。
『デビルマン』が大好きな私にとって、原作の荒い劇画は、いまとなっては読み返すのが少し負担でした。
ふと『デビルマン』を思い出した時、私に原作を読む以外の新しい選択肢をくれたこの作品を、私も深く愛していきたいと思います。