この世界の片隅に(劇場版アニメ)
- 初出:2016年
- 作者 / 原作者:こうの史代
- 監督:片渕須直
- 制作会社:MAPPA
- 声優:のん 小野大輔 潘めぐみ 細谷佳正
記事を書いた人の評価
- 好き : ★★★
評価基準を表示
好き
- ★★★★★ 生涯の心の宝物
- ★★★★ 素直に好きと言える
- ★★★ 得るものはあった
- ★★ 暇つぶしにはなった
- ★ お金と時間の無駄
- 万人受け: ★★
評価基準を表示
万人受け
- ★★★★★ 誰でも楽しめる
- ★★★★ 拒否反応はなさそう
- ★★★ 慣れた人なら大丈夫
- ★★ 偏りがあり人を選ぶ
- ★ マニアしか理解不能
- 完成度 : ★★★★
評価基準を表示
完成度
- ★★★★★ これ以上望めない
- ★★★★ 十分満足できる
- ★★★ 少し気になる箇所も
- ★★ 素人が作るよりマシ
- ★ 酷すぎてむしろ奇跡
作品の内容
1944年(昭和19年)2月、絵を描くことが得意な少女浦野すずは、広島市江波から呉の北條周作のもとに嫁ぐ。戦時下、物資が不足し、配給も乏しくなる中、すずは小姑の黒村径子の小言に耐えつつ、ささやかな暮らしを不器用ながらも懸命に守っていく。
配信情報
2018/04/08現在
今のところ、全配信、購入のみ。
Amazonビデオ(課金)
楽天TV(課金/見放題)
U-NEXT(課金/見放題)
ビデオマーケット(課金/見放題)
レビュー(ネタバレなし)
この記事に続いて、レビュー(ネタバレあり)もあります。
わりと話題になりましたんで、観た人、作品名を聞いたことある人も多いかと思います。
私も、一応劇場まで足を運んでおります。
評価の高いレビューが多い作品ですので、かなりの期待値を持って観に行きました。
ちなみに、原作は未読でのレビューです。
素直な感想。
とても完成度の高い映画だな。
本当に、そう感じました。
ただ、商業的にとても成功するとは思えない作品でもありました。
この作品はクラウドファンディングをきっかけに作られたそうです。
クラファンの資金で予告編(PV)を作り、そこから大口のスポンサーを集めるという手法で資金集めがなされました。
新しい時代のやり方で作られた忘れてはいけない時代の物語。
正直に言います。
これをお子様に見せたいと考える親御さんもたくさんいらっしゃると思います。
しかし、これは全くもって完全に大人向けの作品です。
子供をスクリーンに引き寄せるマジックが全くありません。
そのかわり、時代考証や何気ない人物の動き、表情などあらゆる部分のリアリズムが、あり得ないくらいに徹底しています。
すずさんの妄想と現実が入り乱れるようなアニメ的な描写もありますが、原則としてはリアリズムが貫かれています。
しかも、味付け薄めで日常の出来事と非日常の出来事を、次から次へこれでもかと浴びせてきます。
集中力を保って鑑賞できれば、とても良い作品です。
まるで、アニメで描いた完全なドキュメンタリーのようでした。
アニメの一つの可能性を示す、徹底したリアルな(写実的という意味ではありません)表現手法は、本当に素晴らしいものでした。
もしこれから観られる方がいらっしゃいましたら、一応アドバイスをしておきます。
この作品にはいわゆる「エンターテインメント」の要素はほぼありません。
ですから、しっかり集中して観続ける覚悟を決めてからご覧になってください。
先に原作で予習してから観るのも良いかもしれません。
Blu-ray
原作コミックまとめ買い
Kindle版
コミックス版(上)
コミックス版(中)
コミックス版(下)
評価者
j-cultures.org
評価日
作品名
この世界の片隅に
好き
レビュー(ネタバレあり)
◆クリック【ネタバレを読む】クリック◆私は、戦争の「悲惨さ」を描いた作品は好きではありません。
大体が、表現者による事実の大幅な捏造や歪曲を含み、あるいはひたすら感情に訴える演出がなされているからです。
ただ、この作品はそうではありませんでした。
当時の人々の生活が、本当に目の前で展開されているかのようにリアルに美しく描かれています。
押し付けがましい反戦メッセージもありません。
語るべきメッセージは、そこで起きた事実が語ってくれます。
観客を泣かせようと思うと簡単に泣かせられるテーマですが、たぶん、敢えてそういう演出がなされていません。
少なくとも、私は、目の前で起こる戦時中の人々の生活にずっと釘付けで、感情を動かす余裕もなく、ただただ圧倒されていました。
戦争の終わりを告げる、あの「玉音放送」に感情を爆発させるすずさん。
「そんなことわかっとったはずやろうに、まだここに5人もおるのに、まだ左手も両足も残っとるのに!」
戦争に負けた悔しさなのか、こんなにもいろんなものを犠牲にしてきた戦争というものが終結することへの何らかの戸惑いがあったのでしょう。
どういう意図で描かれたシーンなのか、解釈が難しいですが、「戦争が終わる」というのがただ「平和がきてよかった」なんて、戦争を知らない我々が簡単に考えるようなものではないということも、作者が言いたかったことの一つではないでしょうか。
すずさんは戦争という逆境をむしろバネにして生きていたのだとか、いろんな解釈ができると思います。
でも、この際、解釈はどうでも良いです。
戦争があった。
悲惨な出来事があった。
その地獄を生き抜いた人がいた。
「今」は「過去」の礎の上にある。
我々は、しっかりと大地を踏みしめて前に進んでゆく。
そう、「何かをなすべきだ」とか「こういうことを感じるべきだ」とかそんなことはどうでも良いんです。
ただ、我々はしっかりと前に進んでゆきましょう。
ありがとう、すずさん。
・
・
・
(追記)
一点だけ、いちゃもんを笑
徹底してドキュメンタリーなタッチで進んでいた演出が、最後の最後で崩れます。
原爆にさらされた親子。
そのシーンだけが、まるで小学校の「道徳」の教科書のように描かれます。
原爆の悲惨さは重々理解していますが、突然あからさまな描かれ方に変わりますんで戸惑います。
何か、そうしなくてはいけない圧力があったのでしょうか。
原作を読んでいませんのではっきりとは言えないのですが、この作品は別に原爆の悲惨さを徹底して訴える意図を持っているようには見えません。
なので、あからさまな原爆の描写は逆効果な気がしました。
たぶん、いろいろ話を端折ってるのでしょう。
アニメ単体で見れば、子供の登場シーンからだけで良かったと思います。
それで十分意味は伝わったと思いますし、そういうアニメだと思ったんですけどね。
やっぱり、きちんとレビューするには、原作も読む必要がありますね。
原作コミックまとめ買い
Kindle版
コミックス版(上)
コミックス版(中)
コミックス版(下)